日本は、資本市場、民間設備投資、長期的な貯蓄ニーズにおける構造変化を背景に、新たな成長段階に入っています。本Japan Q&Aでは、アポロの日本代表を務める柏樹康生が、日本の変わりつつあるプライベートキャピタルの役割について語ります。また、資産運用や柔軟な資本提供、リタイアメント&ウェルス・ソリューションを通じて、アポロが日本の企業や機関および個人投資家を、どのように支えているかについても見解を述べました。
日本の金融情勢や企業環境の中で、最も重要な変化が見られるのはどこでしょうか。
日本は、成長、イノベーション、そして将来の経済安定を求める新たな局面に入りました。数十年に及んだゼロ金利政策と低インフレ時代を経て、賃上げの広がり、ガバナンス改革、息を吹き返した民間設備投資が、日本経済を刺激しています。こうした動きを受けて、資本効率と長期的な競争力に対する企業の経営陣の考え方は変化しています。東証株価指数(TOPIX)構成企業の約半数は、株価純資産倍率(PBR)がいまも1倍を下回り、4割以上の企業はネットキャッシュがプラスです。(1) つまり、資本をより生産的に配分する機会と、その実行を迫る圧力が浮き彫りになっているのです。さらに、いま最も変わったと感じるのは、考え方です。より楽観的に、より現実的に、より前向きに——そんな雰囲気が広がりつつあります。単なる一時的なトーンの変化ではなく、構造的な転換が進んでいるようです。
この新しい環境下で、日本企業は資本コストをどのように捉え直していますか。また、現在最も満たされていないニーズはどの分野だとお考えですか。
日本企業の経営陣と話していると、多くは一歩引いて、成長とレジリエンス(回復力)を支える資金の調達方法を再検討していることが伺えます。銀行が引き続き企業の中心的なパートナーであることに変わりはありませんが、最先端の製造分野であれ、デジタルインフラであれ、エネルギーであれ、企業が現在行なおうとしている投資の多くは期間が長く複雑です。当然、そこに短期資金とのミスマッチが生じます。つまり、資金源の多様化と、長期的な事業戦略によりふさわしい形で資本を提供受けられる新たな手段を模索する動きが強まっています。また、企業は柔軟性と同時に、確実さとスピードも求めています。より戦略的で熟考された資本計画への転換は、現在進行している最も重要な変化の一つです。
日本の企業、機関および個人投資家は、アポロの資産運用、キャピタルソリューション、リタイアメント&ウェルスにまたがる統合アプローチをどう評価していますか。
日本は、方向性の一致と長期パートナーシップを非常に重視する国であり、これはアポロのアプローチとよく合います。当社は独自の統合プラットフォームにより、資産運用、ウェルスおよびリタイアメント・ソリューション、オーダーメイドの資本構成など、お客様のさまざまなニーズに対応できます。アポロは、商品ありきではなく、まず目的から出発し、そこから逆算してお客様に最適なソリューションを設計します。こうしたアプローチは、創造性、一貫性、規律を大事にする日本のパートナーから共感を得ています。さらに、単独ではなく、銀行、保険会社、年金基金と相互に補完しながら協業を進めることができます。
日本の成長シナリオにおいて、プライベートキャピタルが果たす役割が拡大しています。長い目で見て、プライベートキャピタルは日本の金融エコシステムの中で、どのように位置づけられるとお考えですか。
プライベートキャピタルは、日本の金融機関を補完する重要な存在になっています。銀行や従来型の資産運用会社は引き続き重要な役割を担いますが、プライベートキャピタルは、より高い柔軟性、長い投資期間、条件の個別設計が求められる領域で、既存の資金供給ではカバーしきれない部分を補う役割を果たします。特に、長期投資と企業改革に関連する領域では、その傾向が顕著です。プライベートキャピタルは、安定性と品質を重視しつつ、成長を下支えすることができます。適切に設計すれば、幅広いソリューションを提供し、経済全体の資金調達源を多様化することで、エコシステム全体を強化できる可能性があります。近年、日本の成長においてもプライベートキャピタルの役割はますます拡大しており、この流れは続くとみています。
人口動態の変化は、日本の将来を左右する大きな力となっています。リタイアメント・ソリューション需要にどのような影響を与えていますか。
日本には、世界有数の規模を誇る保守的な貯蓄基盤がありますが、長年にわたる低金利環境のもとで、安定収入を確保することが難しくなっています。(2) 高齢化が進むなか、長期収入と安定性に目が向くのは自然なことです。(3) アポロは、リタイアメント・サービス事業であるアテネを通じて、再保険や資産運用のソリューションで日本の保険会社と協業しています。これにより、バランスシートの強化を後押しするとともに、貯蓄者のニーズに沿ったリタイアメント商品を支えています。アポロの統合モデルは、長期の負債と、質の高い所得創出資産をマッチングさせるよう設計されています。アポロは、環境変化に強く、分かりやすく、長期的な収入を提供することで、尊厳ある老後を支えることを目指しています。
日本のウェルスマネジメント分野も進化しています。投資家の間でどのような変化が起こっているのでしょうか。アポロはこの動きにどう対応していますか。
投資家の間では、収入の確保、分散、そして下方リスクをどう抑制するかへの関心が高まっています。数十年にわたり現預金がポートフォリオの大半を占めてきたなかで、多くの貯蓄者が、集中リスクが高まりつつあるパブリック(上場)市場へのエクスポージャーを抑えながら、魅力的なリスク当たりリターンを得る方法を模索しています。(2, 4) こうした動きは、機関投資家、ファミリーオフィス、個人投資家のいずれにも共通しています。アポロの役割は、安定性と長期的な成果を重視したプライベート市場ソリューションへのアクセスを提供することで、そうしたニーズに応えることです。ここで重要なのは、投資家への丁寧な説明とストラクチャー(設計)です。投資家は、これらの戦略がポートフォリオ全体の中でどう位置づけられ、どのように組み込まれるのかを明確に理解したいと考えています。ウェルスマネジメントの進化はまだ初期段階ですが、方向性は明確です。
日本の金融機関は、アポロのようなグローバル企業との協業をどう捉えていますか。この市場でとりわけパートナーシップが重要なのはなぜでしょうか。
パートナーシップと長期志向は、日本におけるアポロのビジネスの中核です。当社のビジネスは、この地域20年にわたり根付いています。当社は長期資本を提供しているので、長期的なパートナーシップとは自然に相性が良いのです。アポロのグローバルな展開力は重要ですが、それと同じくらい大事なのは、そうした経験を日本でどう生かすかです。アポロの規律ある価値重視のアプローチは、品質や安定性、そしてまず相手の話に耳を傾ける姿勢を重んじる日本の考え方と一致しています。信頼とは、取引の数ではなく、一貫性を通じて醸成されるものです。だからこそ、当社にとって、現地に根差した体制と、継続的な関与が極めて重要なのです。
今後10年間で、日本におけるアポロの役割はどのように変化していくとお考えですか。
日本はアポロにとって、長期的な重点市場です。当社は、何十年もこの地域でビジネスを行っていますが、東京に正式に事務所を構えたのは2019年であり、以来40名以上のプロフェッショナルを抱えるまでに成長しました。日本が投資を続け、資本市場を整備し、長期的な貯蓄ニーズに対応していく中で、プライベートキャピタルは補完的な役割としてますます重要になるでしょう。今後もパートナーシップを重視し、日本企業の成長を後押しするとともに、退職後の生活の質を高め、投資家の皆様が変化を乗り越えられるよう支援してまいります。当社は、この刺激的な新たな成長局面において、日本市場に対してキャピタルソリューションと堅実な利回りを提供することを目指しています。
情報源:
- FactSet、フランクリン・テンプルトン、いちよし経済研究所。2025年6月時点。
- 財務省。2025年9月時点。
- 総務省統計局。2026年1月時点。
- 米国国際貿易局(U.S. International Trade Administration)。2025年8月時点。